Microsoft Fabric IQとCopilotが連携|社内データに根拠を持つAIへ
Microsoftは2026年9月28日、Microsoft FabricとAzure Databasesの新機能を発表しました。Fabric IQは管理された業務の文脈をCopi
Microsoftは2026年9月28日、Microsoft FabricとAzure Databasesの新機能を発表しました。Fabric IQは管理された業務の文脈をCopilotへ提供する仕組みです。
Power BIのセマンティックモデルや指標、業務定義を利用し、組織が共通認識として扱うデータに基づく回答を目指します。Fabric IQを利用するCopilot ChatとCoworkは一般提供が始まったとしています。
【Fabric IQが解決しようとする課題】企業の中には、営業、経理、顧客対応などの部門ごとに異なる数値や定義が存在することがあります。同じ『売上』でも、返品を差し引くか、いつの時点で集計するかによって数字が変わります。AIに社内データを検索させるだけでは、この違いを正しく判断できません。Fabric IQは、組織が管理する業務の定義や関係性をCopilotの回答へ反映することを目指しています。
【セマンティックモデルとは】Power BIのセマンティックモデルは、データの項目や指標、テーブル間の関係などを、利用者が理解しやすい業務上の意味として整理する仕組みです。例えば売上高の計算方法を共通化すれば、複数のレポートで同じ基準を使いやすくなります。Fabric IQは、この既存の定義をCopilotにも利用させることで、部門ごとに違う回答が生まれる問題を減らそうとしています。
【Copilot ChatとCoworkへの提供】Microsoftは2026年9月28日の発表で、Fabric IQを利用するCopilot ChatとCoworkが一般提供されたと説明しています。Chatでは業務指標について質問し、Coworkではその情報を複数工程の作業に使う構成です。一方、Codeとの連携はFrontierプログラムを通じて今後提供される予定とされています。提供済みの連携と予定を区別する必要があります。
【営業予測を尋ねる場面】Microsoftは、営業会議の準備中にCopilotへ最新の売上予測を尋ねる例を紹介しています。Fabric IQがPower BIの管理されたモデルを参照すれば、普段のレポートと同じ指標を使った回答を得やすくなります。会議の時間を数字の食い違いの確認ではなく、次の施策の検討に使える可能性があります。ただし、基礎データの更新が遅れていれば、回答も古くなります。
【単純なRAGとの違い】一般的な検索拡張生成では、関連する文書を探してモデルの回答へ渡す方法が使われます。しかし業務指標では、文書に書かれた数字を拾うだけでは計算条件が一致しない場合があります。セマンティックモデルに定義された指標を参照する方法は、計算の意味を共通化しやすい点に特徴があります。どちらの方式も用途によって使い分けが必要です。
【アクセス権を維持する重要性】Microsoftは、Fabric IQが既存のアクセス制御とガバナンスを保ちながらCopilotへ文脈を提供すると説明しています。AIが便利でも、利用者に権限のない売上データや個人情報を表示してはなりません。実際の導入では、Power BI側の権限設定や共有範囲が意図どおりかを確認する必要があります。
【自動で有効になる範囲】公式発表では、FabricとPower BIの顧客向けに、Copilot ChatとCoworkでこの機能が既定で有効になると説明されています。ただし、個々の利用者がどのデータを参照できるかはアクセス権や環境設定に左右されます。機能が有効であることと、すべてのデータが全員へ公開されることは同じではありません。
【IQ Sharingという拡張】Microsoftは、組織をまたいで管理されたデータと業務文脈を共有するIQ Sharingも紹介しています。発表時点ではプレビュー段階です。取引先やパートナーとの連携に役立つ可能性がありますが、共有する情報の範囲や契約上の制約、更新責任を明確にする必要があります。組織間の共有は、社内だけの利用より慎重な管理が求められます。
【Observabilityで運用を見える化】FabricのObservabilityでは、ジョブ、容量、ワークスペースなどを横断して状態を確認する仕組みが紹介されています。AIを使った業務処理は、元のデータ基盤が正常に動いていることが前提です。更新処理の失敗や性能低下に気づけなければ、AIの回答が正しそうに見えても判断を誤る可能性があります。
【Fabric Appsとデータ活用】Microsoftは、管理されたFabricのデータに近い場所でアプリを開発するFabric Appsも発表しています。データ接続、バックエンド処理、ストレージ、ポリシーに基づくアクセス制御を組み合わせる構想です。試作を素早く作るだけでなく、実際の業務に耐えるアプリへ進めることを目指しています。
【導入前に整えるべきデータ】Fabric IQの効果を得るには、まず指標の定義、データの所有者、更新頻度、権限を整理する必要があります。例えば『顧客数』が契約件数なのか利用者数なのか曖昧なままでは、AIが回答を生成しても混乱は解消しません。AIの導入をきっかけに、既存のデータ管理を見直すことが重要です。
【実務での検証方法】導入後は、既存のPower BIレポートとCopilotの回答が一致するか、利用権限の違うユーザーに適切な結果が返るか、データ更新後に回答が変わるかを確認したいところです。回答の見栄えだけでなく、根拠となる指標や集計条件を追えることが重要です。Fabric IQの価値は、AIが流暢に説明することではなく、組織が信頼する定義に沿って仕事を進められることにあります。
社内データをAIに接続する際には、アクセス権、指標の定義、更新頻度が重要です。AIの回答をそのまま確定情報とせず、元データを確認できる設計が求められます。
TECH CURRENTでは、発表内容と実際の提供状況を区別しながら、利用者や企業への影響を引き続き確認していきます。